こんにちは。チョコレートジャーナリスト、ショコラコーディネーターの市川歩美です。
この記事ではチョコレートブランド「ブノワ・ニアン」ブランドについてまとめます。また、ニアン氏が直接私に語ってくれた、チョコレート・カカオに対する考えをシェアします。
ブノワ・ニアンとは?
ブノワ・ニアンは、ベルギーのリエージュを拠点にするチョコレートブランドです。代表のブノワ・ニアンさんが自らカカオ産地へ赴き、カカオ豆を探し、選びます。カカオをベルギーの工房でチョコレートに仕上げるまでの全てを行うビーントゥバーブランドです。
店舗は、ベルギー国内に5店舗。日本に店舗はなく、バレンタインシーズンなどに、期間限定発売されます。
ショコラティエ ブノワ・ニアンの経歴
ブノワ・ニアン氏は、意外な経歴の持ち主。実は、元エンジニアだった、という人です。
私は、もともと30才までエンジニアをしていました。
キャリアを変えることはチャレンジでしたが、自分の手で何かを作るというエネルギーを感じたかったのです。3〜4歳から家族が集まる場所には、常にホームメイドのケーキやクッキーがあり、その思い出が残っていました。私は「何かを自分の手で作る」という夢をあきらめきれずに、ここまできました。
(ブノワ・ニアン氏)
市川歩美によるインタビューにて
単一産地(シングルオリジン)へのこだわり
ブノワ・ニアンは、シングルオリジン(単一産地)のカカオ豆にこだわっています。「カカオの個性を見極め、選び、最大限に個性を引き出したチョコレートを製造するのが目標」と、ニアン氏。
カカオ産地は、南米や中南米などです。ダイレクトに生産者との関わりをもち、産地をリスペクトしつつチョコレートを製造しています。
チョコレートの世界には大きな7つのグループがあり、そこから仕入れて作るチョコレートが99%を占めます。私は「残りの1%に入りたい」と思いました。チョコレートは多くの場合、(複数産地産カカオの)ブレンドです。色々な種類を混ぜて作られているので、ひとつの品種のものを味わえないという「がっかり感」が、私にはありました。私はひとつひとつの素材、品種の個性を大事にしているのです。
(ブノワ・ニアン氏)
市川歩美によるインタビューにて
ブノワ・ニアンのボンボンショコラ
ブノワ・ニアンは、いわゆる板チョコレートの形をした自家製チョコレートだけでなく、ボンボンショコラ(一粒タイプのチョコレート)も作っています。
ニアンさんに直接ご紹介いただいた、新作、4種のボンボンショコラの内容は以下です。
- 「ラジェド ド オウロ74%」
比較的明るい色です。カカオ分は74%。産地はブラジルで、テイストは赤い果実の酸味と花の風味があります。コンチングは72時間。カカオ豆からチョコまでの一貫製造。まろやかで口どけがよく、黒糖のような風味。マイルドな酸味と渋みがあります。
- フレーズ&ポワーブル・デ・セシュアン
ストロベリーゼリーと、華北山椒を使ったガナッシュが2層になっています。甘すぎないストロベリーのボンボンショコラです。
- マント
フレッシュミントの葉を使用したダークチョコレートガナッシュです。「朝一で市場へいってフレッシュなミントを手に入れ、工場でクリームにいれてアンフュゼします。原材料を一番大事にするチョコレートの作り方といえます。まるでミントの歯をかんだようなエレガントな味になっていると思います」。(ブノワ・ニアン氏)
- コーヒー豆とスターアニス
コーヒーを抽出するのではなくチョコレートにアラビカの豆をそのまま使用。アニス、ミルクチョコレートの香りの調和です。(コーヒー豆を0.56%使用)
ブノワ・ニアンさんのカカオへの思い
実際にカカオ産地へ出向いて仕事をする、ブノワ・ニアンさん。その活動が伝わるような品を、拝見しました。
愛用しているというパナマ帽です。「エクアドルの人たちが必ず被っているんです。現地では息子と一緒にかぶります」(ブノワ・ニアンさん)。
ほかにも、2004年にお母さまから譲り受けた「ショコラティエール」(ホットチョコレートを作るポット)をはじめ、チョコレートに関わる思い出の品々も見せていただき、ニアンさんが、子どもの頃からチョコレートが好だったことが、わかりました。
ブノワ・ニアンさんが語ってくれたこと
そして、ブノワ・ニアンさんが私に語ってくれたことの一部をご紹介しますね。
カカオ産地の現地では、プランニングができず、いくたびに、スケジュールが予想からまったくかけはなれた形になってしまうんです。(微笑みながら)
カカオも収穫される時期ごとに異なる、瞬間的なものです。コレクションもいくら作っても、違うものがうまれる。アドリブの世界を生きているという面白さがあります。
これから日本の美しい素材を使いながら、新たに五感で楽しめるチョコレートを作っていきたいです。今後もカカオ豆にこだわったチョコレートを作っていきます。
カカオは農作物。すべて人間の思うようにはならない。カカオ産地から向き合うチョコレート作りは困難を伴うものですが、それを愛おしむように捉えている様子が伝わりました。
ブノワ・ニアンの日本の店舗は?
日本にブティックはありませんでしたが、2023年秋に、素敵なニュースが飛び込んできました!
2023年10月に、銀座にブティックがオープンします。詳しくは記事にまとめましたので、下のリンクから読んでください。
ブノワ・ニアンのオンラインショップ
ブノワ・ニアンは、オンラインショップでも商品を揃えています。
オンラインショップはこちらから
日本での展開を、今後も楽しみにしましょう。
テキスト
チョコレートジャーナリスト 市川歩美