ココアシガレットと私の師匠

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こんにちは。チョコレートジャーナリスト、ショコラコーディネーターの市川歩美です。「ココアシガレット」って知っていますか?

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ココアシガレット(オリオン)

先日近所のお菓子屋さんで不意に出会い、しばらく見つめてしまいました。なつかしい。そしてどうしてもほしくなってお買いもの。30円でした。

1951年生まれの、オリオン株式会社の看板商品です。来年、70周年を迎えるロングセラーです。「タバコの真似して、子供のときにくわえました」だなんて、そういうお声が聞こえてきそう。

実際私のインスタのストーリーやTwitterのへのメッセージにもそんなお声がたくさん届きました。

ココアシガレットのデザイン

デザインがいいですよね。あらためてみると。こういうふうに自宅に置いてさまになる「30円」ってなかなかないんじゃないかな?

絵になっていますよねえ、色もカタカナもいいです。

ココアシガレットはチョコじゃない

ただし。チョコレートファンのみなさんならもうご存知ですよね。ココアシガレットは、チョコではありません。

チョコを期待すると違うー、となります。「ココアシガレット」は、カリっと硬くて、ラムネのような味。硬いガム?のようなかんじの砂糖菓子です。「ココア」という名称からせめて「ココア味」を期待したいところでが、そうでもなく、白い甘いお菓子です。

こんなふうに、小さなチョークのよう。

ところで 実はですね。子供の頃に食べました、と書いてくださるフォロワーさんがいるのですが、私はどうしても味が思い出せないんです。きっと食べてないんですね。そのかわり、カリッとした食感だけを記憶しています。多分チョコ好きだったので「チョコじゃないな」とすぐにわかり、じっくり味わわなかったんじゃないかと思います。

その替わりに 別のタバコの形のチョコをよく覚えています。みなさんどうでしょう。「タバコ型のチョコ(薄い紙で巻いてある)」みたいなもの。あれは何だったのでしょう。タバコを嗜んだ祖父の真似をして「ふー」とか大人ぶって遊びました。私の記憶では、あれは、チョコでした。

今はなき師匠のピースみたい

ここで少しだけ個人的なお話です。

「ココアシガレット」を見つめていたら、私の放送局時代の師匠を思い出しました。佐野喜多男さんというプロデューサーで、とても厳しい人でした。佐野さんはいつもシャツのポケットに「ピース」を入れていました。たしか、こんな色だったんですよね、ちがったかな。

私は、師匠がいつも本と一緒に持ち歩いている「ピース」を時々眺めていました。容赦なく怒られましたし、決して私を甘やかすことなく仕事というものをわかるまで叩き込んでくれた人でした。私は社会でやっていくための基礎を佐野さんから学びました。若いディレクターだった私は、師匠の話を聞きながら(なんどもなんどもへこみながら)、タバコの箱を何度も横目で見ていたので、あの深い紺色を覚えているのかもしれません。

私は師匠が大好きでした。多くの先輩タレントさんたちに愛されてもいました。あるお正月、年賀状が届いたときには私、ようやく少しは認めていただいたのかも、と思って、うれしくてうれしくて飛び跳ねたこと。そんないくつもの思い出や、教わった多くのことは、今も私の宝ものです。

いまは、ステイホームな日々。遠くへ行くことができないから、心が遠くへ。徒歩圏内のお菓子屋さんへよく足を運ぶようにもなって、みのがしていたものを見つけたり、ゆっくり思い返す人のこともあります。

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ジャーナリスト/チョコレートジャーナリスト  市川歩美

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