こんにちは。チョコレートジャーナリスト、コーディネーターの市川歩美です。ELLE で私(市川歩美)が「カカオショック」について解説しています。未読のみなさん、ぜひ読んでくださいね。
カカオの価格高騰について解説(ELLE)

2024年6月24日公開されたELLE(グルメ)の記事です。以下にリンクします。
世界的なチョコレート危機「カカオショック」とは? スイーツ好きが今できること
西アフリカのカカオ産地
西アフリカの主要生産国、コートジボワールとガーナの状況については、この記事に書いたとおりです。また、過去に私が書いた記事なども参照してください。


ガーナでは金の違法採掘も問題になっています。
違法採掘をする人々によって、土地が荒らされ、土壌の質が悪化、カカオ農園が破壊されているというニュースも入ってきました。カカオ農家を営む人々から、土地と労働力を安く買い占める人々もいるという情報もあります。カカオ農家は、違法に金を採掘する場になってしまうのです。
南米、アジアの産地が優位に
今回のELLEのインタビューでは、南米、中米、アジアなどの、西アフリカ以外の産地が優位になっている、という話をしました。
どういうことかと言うと、西アフリカでは気候変動や国の情勢などの影響で収穫が減っていますが、それ以外の地域では収穫が減っていなかったりもします。しかし、カカオの標準価格は世界一律、上がっています。

そのため、これまで南米や中米、アジアのカカオ産地や生産者から、直接カカオ豆を購入していたブランドやメーカーに問題がおきています。
つまり、生産者にしてみれば、特にこれまでと状況は変わらないのに、カカオがいきなり数倍で売れるようになったわけです。生産者は突如、私たち消費国に、これまで通りの価格では売ってくれません。
これによって、プレミアムなチョコレートを作ってきたメーカーに問題がおきています。
ELLEの記事にもあるとおもいますが、例えばコロンビアの産地と関わる小方真弓さん(カカオハンターズ)、ペルーの産地と関わる太田哲雄さん(アマゾンカカオ)は、 市場価格に上乗せして生産者に支払いをし、そのかわりに質のよいカカオを作ってもらい、チョコレートのクオリティをキープしてきました。
しかし今や、その上乗せ価格を通常価格(市場価格)が大きく上回っています。
丁寧な作業をしなくても、放っておけばふつうのカカオが高く売れるようになった西アフリカ以外の生産者は、今後いくら支払えば、丁寧な作業をしてくれるのでしょうか。
仮にこれまでのように市場価格に上乗せ価格を支払うとなると、カカオはとんでもない金額になります。そういうカカオを使ったチョコレートの価格に、消費者は耐えられるでしょうか。クオリティの高い製菓用チョコレートを作ってきたブランドや、ダイレクトに産地と関わっているビーントゥバーメーカーも、同じ問題を抱えています。
いまや、カカオ産地によってはですが、チョコレートブランドが支援する立場でなく、生産者側が優位な状況ともいえるのです。
カカオの価格高騰の話は、チョコレートの産業構造の問題に関わり、とても複雑です。少しずつひもときつつ、みなさんにお伝えできればと思います。
text & photo チョコレートジャーナリスト 市川歩美