【The Chocolate Journal チョコレートニュース&レポート】
こんにちは。チョコレートジャーナリスト、ショコラコーディネーターの市川歩美です。
今年で創業100周年を迎えたフランスのチョコレートメーカー「ヴァローナ社」について、解説します。
ヴァローナが創業100周年 そのはじまりは?
ヴァローナが創業したのは1922年、場所は、南フランス「ヴァレ・デュ・ローヌ」地方のタン・レルミタージュです。
創業したのは、一人の菓子職人、アルベリック・ギロネ 氏(Albéric Guironnet)。当初は「ショコラトリー・デュ・ヴィヴァレ」(Chocolaterie du Vivarais)という名で、最高品質のカカオを使ったチョコレート作りを手がけていました。
クーベルチュールを作って販売したのは、1950年です。ヴァローナ(Valrhona)を正式なブランド名にしたのは、1947年のことでした。
ヴァローナの名前の由来は?
ヴァローナをよく知るみなさんも、Valrhona(ヴァローナ)の名前の由来をご存知ないかもしれません。
これは、vallée(渓谷)Le Rhone(ローヌ川)を組み合わせて作った言葉。ローヌ渓谷とローヌ川の両方を示しています。ローヌ渓谷は、フランスの南東部を流れるローヌ川の両側に位置する地域。ヴァランス市が、その渓谷の中心とされています。ワインの産地としても有名ですね。
ヴァローナは有名シェフに愛されている
ヴァローナは、もともと菓子職人が始めたチョコレートブランド、ということで、創業以来、「味、おしさへの強いこだわり」があります。
世界のミシュラン三つ星レストランをはじめ、ジャン=ポール・エヴァン、ラ・メゾン・デュ・ショコラといった、名だたる有名ブランドのシェフがヴァローナのクーベルチュールを使用。
プロのショコラティエ、パティシエ向けに、新しいレシピや可能性を提案をする「エコール・ヴァローナ」は1989年創立しました。
フランスのタン・レルミタージュをはじめ、東京、ニューヨークにエコール(学校という意味)があり、30名のパティシエ・ショコラティエが社員が所属し、新しい製菓の世界のあり方を世界のシェフに向けて、伝えています。
ヴァローナのカカオ産地との関わり
ヴァローナは、14カ国のカカオ産地と関わり、長期的なパートナーシップがあります。そのうち現在は12カ国からカカオ豆を購入し、ヴァローナがカカオ豆を購入している生産者の数は、17,215人にのぼります。
各国に契約農園では、カカオの栽培から収穫、発酵や乾燥、豆の選までの全てに、現地でヴァローナのスタッフが関わり、管理。
選ばれたカカオ豆だけが、フランスのタン・レルミタージュにあるアトリエでチョコレートになります。
サステナビリティへのとりくみ
ヴァローナ社の特徴には、シェフ目線での「おいしさ」へのこだわりのほか「サステナビリティ」への長年のこだわりがあると、ヴァローナ ジャポンのマーケティングディレクター、中村千賀さんが話してくれました。
長い年月、カカオ生産者と関わり続け、SDGsという言葉が生まれる前から、カカオ産地との協業・支援を続けてきたヴァローナ社。
社内には、カカオ供給チームがあり、カカオの栽培に関わる農学者が所属しています。
「持続可能性な農業である、アグロフォレストリーを促進し、二酸化炭素の排出量コントロール、公平性と持続可能性を考えた事業活動を行なっています」。(中村さん)
チョコレートにとどまることなく、現在は社内に砂糖や小麦まで踏み込んだガイドラインがあり、シェフへ、原材料も含めた提案をしているそうです。
B Corp(B Corporation)を取得
また、ヴァローナ社は、Bコーポレーション(B Corporation)を取得しています。
Bコーポレーションとは、アメリカの非営利団体B Labによる国際認証で、商品に対して、ではなく、企業を認証するもの。厳格な基準があり、環境などに配慮した公益性の高い企業が認められます。
1986年に生まれた「グアナラ 70%」
ヴァローナには、代表的なチョコレートがいくつかありますが、1986年に登場した「グアナラ70%」をはずすことはできません。
現在でこそ、カカオ分70%以上のカカオ分の高いビターチョコレートは一般的ですが、かつては「こんな苦いチョコ???」と、驚かれるようなめずらしい存在でした。
そんなカカオ分の高いチョコレートを、製菓用として初めて広く発売したのが、ヴァローナです。
ヴァローナを代表するチョコレートについては、新たに記事にします。
100周年おめでとうございます!
〈ヴァローナ〉100周年記念イベント「The Chocolate of Chefs~知られざるプロフェッショナル・チョコレートの世界へ~」が、9月25日と26日に、セルリアンタワー東急ホテルで開催されました。
私も参加し、ヴァローナジャポンの中村千賀さん、同社シェフ・パティシエールの境智子さんとも、色々とお話。改めて、ヴァローナをご存知ないみなさんへ、とまとめてみました。
ヴァローナは、私も2度、タン・レルミタージュの本社を訪ねたことがあり、思い入れがあります。
それにしても、100周年ってすごいこと。そんな節目に私も生きていることが、光栄です。
これからも200年に向けて、美味しいチョコレートを作り、世界中のプロのショコラティエやパティシエとともに、カカオ・チョコレートの世界を豊かに美味しく、美しく彩ってください。
ヴァローナさん、100周年、おめでとうございます!
カカオ産地からチョコレートになるまでの道のりや、ヴァローナとガブリエル・パイアソン氏が設立したパティシエの世界大会「クープ・デュ・モンド・ドゥ・ラ・パティスリー」のことなど、まだまだシェアしたいこともありますので、また書きますね!
text&photo チョコレートジャーナリスト 市川歩美