こんにちは。チョコレートジャーナリスト、ショコラコーディネーターの市川歩美です。
今日(2020/11/08)の日本経済新聞の朝刊(NIKKEI The STYLE)に記事を書きました。
亀有香取神社の中にある「パティスリー・ラ・ローズ・ジャポネ」のお話です。本日まだ間に合う方はぜひ紙面で読んでください。新聞を広げて読むときれいな、大きな記事です。
日本経済新聞で書きました
いつものように、多くの方から「読みました」メッセージをいただいています。「ほっこりしました」「心があたたまりました」「ぜひケーキを買いに行きます」など。
私が取材、執筆したことが、みなさんを少しでも豊かにするなら、それが私のいちばんの幸せです。日曜の朝、日本の多くの読者が全国で紙面を広げる姿を、いつも想像しながら書いている私がいます。(フォロワーさんのメッセージ、いつも励みになり、うれしいです!)
神社の境内にあるパティスリー
ところで、亀有の皆さんにはすっかりお馴染みの、この亀有香取神社と境内にあるパティスリー。みなさんはご存知でしたか。
境内にパティスリー??
聞けば意外に思うかもしれませんが、訪れればとても自然です。この形になるまでには、長いストーリーがあります。
亀有香取神社に五十嵐宏シェフのお店ができた理由
紙面でもふれましたが、若くして宮司になった唐松さんは、神社を次世代に継承しするためには、「神社も、時代にあわせて変化しなくてはならない」と強く感じたそうです。
「境内に来る人をもっと幸せにしたい」
考え続けていたある時、頭に浮かんだのは、門前の団子屋さん。それなら「ご自身をいつも幸せにしてくれる、五十嵐宏シェフのケーキを、境内で提供できたら、どんなに多くのが幸せになるだろう」と思いついたのです。
ここが大事なところですが、ケーキ屋さんなら、どこでもよいわけではありません。トレンドが大事ではない。商業施設の「テナント」ではないのですから、安易な行動で、自分の代で神社を台無しにはできない。唐松さんは、鎌倉時代から続く伝統、地域との関係を次世代に伝える必要がある立場です。
金町の店を何度もたずね、五十嵐シェフの仕事ぶりを尊敬していたこと、地元を愛し、何よりケーキの美味しさが自分を幸せにしてくれた事実。
考え抜いて「五十嵐シェフしかいない」と確信し、宮司9年目にして思い切って、模型を作って持ち込み、思いを打ち明けたのが原点です。
五十嵐シェフは、唐松さんの熱意を受け、1ヶ月間、何度も神社を訪れては「ここで何ができるのか」を考えたそう。
フランスをはじめ海外経験が豊富な五十嵐シェフは「ヨーロッパには広場があり、そばにパティスリーがあり、人が集う。この地が、地域の広場のような機能を持つ核となり、地域を盛り上げる。人が集まり賑わっていく。そんな役割になれば、というイメージが、高校時代を過ごした地元のこの地で膨らみましたね」と話してくれました。
今でもシェフは兄貴分
「いまでもシェフは兄貴分です」とおっしゃる、宮司の唐松さん。神社とパティスリーが共存共栄し、多くの人が幸せになるように、と目指しているそうです。
神社もケーキも「お祝い」とリンクします。会話がはずみ、笑顔が集まる。清々しい境内で、美味しいケーキをいただく時間を、お子さまからご年配の方まで楽しむ様子が、日常です。
私がお店へ行くと、五十嵐さんは、たいていお客さんに気軽にお声をかけています。お客さんたちはうれしそう。「有名な方なのに、ほとんど五十嵐シェフは、お店にいらっしゃってお菓子を作っているんですよ」と唐松さん。
私はちょっと遠くに住んでいますが、ときどき、電車にのってでかけます。おいしいケーキをたべてお参りに。地域のみなさんの穏やかな時間と空間を、ちょっとだけ、おすそ分けしていただいています。
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チョコレートジャーナリスト 市川歩美