好きなことを仕事にすることは大変?ー市川歩美のケース

  • URLをコピーしました!

こんにちは。チョコレートを主なテーマに掲げるジャーナリスト、市川歩美です。今日はチョコレートジャーナリストの日々、として、先日のできごとからちょこっと自分の仕事について書きますね。

目次

好きなことを仕事にすることについて

私の仕事に興味を 持ってくださる方は多く「好きなことを仕事にできていいですね」とおっしゃってくださる方も、とても多いです。

そんな中、先日ある方に、「好きなことを仕事にするって、いいことですけど、大変なこともあるんじゃないですか?」 とたずねられました。おもしろい質問だなぁ、と思いながら少し考えて私はこう答えました。

「好きなことでもそうでなくても、仕事とはある程度は大変なもの。だからどっちかといえば好きなことを仕事にできているのは、いいことかもしれませんね」

以前、「好きを仕事にする」をテーマにしたメディアからインタビューを受けたことがあります。そのときにお話ししたのは

「好きなものごとを、好きなときに好きなだけ、好きなように楽しむ」
「好きなものごとを対象に、仕事にして、価値を世の中にうむ」

このふたつは、まったく次元が違う話だということです。

私の場合、「好きなこと」がいくつもあって、そのうちのいくつかは仕事になり、いくつかはただ好きで楽しんでいます。

チョコレート、そして書いたり読んだり、伝えること、これらの「好き」は、ジャーナリストの仕事とリンクしました。そして私は人の行動や心理に深く興味をもっていて、これは心理学の仕事につながりました。

それから私はもともと放送局で番組を作っていて、ディレクターの仕事がとても好きでした。伝えたいことを適切に伝える、ものごとの良さを引き出す、興味の対象を掘り下げる、段取る、これらが好きでわりと得意です。これは監修やプロデュースなどの裏方の仕事に生きています。

一方で、音楽やファッション、お笑い、アート、ホタテ(笑)のように、仕事になっていない「好き」も相当多いです。純粋に、好きなときに好きなように楽しむ「好きを楽しんでいるだけ」がいくつもあるから、全体でバランスが取れているのかもしれません。

好きなことを仕事にしたほうが楽しいタイプ

といいつつも、後から考えてわかったんですが、そもそも私はできれば私は、好きなことは全部仕事にしたいタイプ、なのです。

自分が楽しんでいるだけでは物足りないんですね。もちろん仕事にすると厳しいですよ。あらゆることと関わりますし、現実やら真実を知ってしまい、時に不条理にも直面します。めちゃくちゃいろいろありますが、手応えがあります。

「あゆみさん、Mかも笑」とご一緒していた人にいわれ、SだかMだかわからず笑ってしまいましたが、好きを仕事にする、のテーマは深いですよ。延々語れるとわかったので、またどこかでぜひ。

チョコと私は友だちあるいは長年連れ添った夫婦のよう

先日、もうひとつお話ししたのは、

「チョコレートと私の関係は、長いつきあいの友だち、あるいは長年連れ添っている夫婦のようなものかもしれない」という感覚です。

「なにそれ?」と思われるかもしれませんが、たとえばですよ。「もうあなたに夢中」とか「あなたなしでは生きられないわあ」みたいな熱烈なものではないんです。もちろん、チョコレートのことは大好き。でも、もしかしたら、そうした時期を過ぎたあとに訪れる、次のステージというか、深い愛の領域??かもしれません。

「きれいな指してたんだね〜知らなかったよ〜」という、ずいぶん昔の歌がふと頭の中に流れてしまいましたが(なんて曲でしたっけ)、まさにこの歌詞のように、チョコレートに対する魅力の「再発見」はしょっちゅうあり、時代とともに新しい動きもあります。

好きだけど落ち着いている

ところで、最近みんな「沼」って言葉がすきですよね。チョコレート沼、とかでしょうか。抜けられずおぼれているイメージの言葉ですが、私は実のところチョコレートの「沼にはまっている」感覚は、正直なところないです。

もちろん強い興味があるから仕事にしてしまったほどですが、「沼感」はないなあ、落ち着いています。いつも沼から片足出してるので出入り自在です、みたいなですね。(もしかしたら沼の中で平和に暮らしているのだろうか、などと考えたこともありますが)沼のように深い愛がある。でも身軽に出入りするし、外から客観視する。だからこそ細部に目がゆき、あらゆる視点から考えられるのでしょう。

もしかしたら、この感覚があるから、社会に「価値」を生み出す(仕事とする)ことができているのかもしれません。

もうひとつ、これは私の場合、少しアーティストさんに近いかもしれませんが、「感動」がないと動けないところがあります。つまりおもしろくないと動けません。「これはすごい」とか「いいね」とか、心がぐっと動かされる何かがないと原動力がないので、動く気にならないし、書くことも話すこともできません。つまらなくなってしまうんです。

「チョコレートはアート」みたいなことに私が気づいたのは1990年代。「おやつとしてのチョコ」だけではない、新しい発見が、本格的にチョコレート愛好家となったきっかけでした。そういった意味では、チョコレートやカカオが好きでいて、発見があるうちは、私はこの仕事をしているのでしょう。

前例のない仕事を生みだし、続けていますが、同じような人がいないので相談相手もいなければ、参考にする先駆者もいません。自分で考え、自分の足で動き、試行錯誤を繰り返しまくった結果、いまのところ、いまがあります。

チョコレートがどこにでもつながる

そんな今。おもしろいのは、チョコレートやカカオが実にさまざまな分野とつながっていることです。

政治や経済、歴史や科学、ときには文学や音楽、アートにも通じ、「もはや、どんな分野にもつながるのではないか」と感じることさえあります。チョコレートは私に、「あなたはまだまだ世界のことを何も知らないね」と語りかけてくるかのようです。

そうした側面が、新たな原動力です。自分に気づきを与えてくれる存在は宝石のよう。それでいくと、チョコレートと一緒に仕事をしているのは、そういう存在だからでしょう。

最初に戻りますが、もちろん仕事なので大変なことはあります。でも、私の場合は好きなことでなくては仕事にならない。やっぱり私は好きなことを仕事にしていることになりますね。

チョコレートとみなさんに感謝をこめてーー
text ジャーナリスト 市川歩美

  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次