こんにちは。チョコレートを主なテーマに掲げるジャーナリスト、市川歩美です。みなさんは、「コンパウンドチョコレート」という言葉を聞いたことはありますか?
チョコレート好きな方でも、あまり耳にしないかもしれません。でも実は、私たちが味わっている身近なチョコレートのお菓子に使われています。
一見ふつうのチョコレートに見えても、中に使われている油脂の違いが、コンパウンドチョコレートの大きな特徴。
この記事では、特に「クーベルチュールチョコレート」との違いを中心に、コンパウンドチョコレートとは何かをわかりやすく解説します。
チョコレートは「カカオ+油脂+砂糖」でできている
チョコレートは何でできているかというと、主にカカオ豆と砂糖です。カカオ豆は固形分と油脂分があります。
- カカオケーキ(カカオの固形分)
- 砂糖
- ココアバター(カカオの脂肪分)
カカオ豆がもつ油脂「ココアバター」は、チョコレートにとって重要で、口どけや香りに大きく影響します。
コンパウンドチョコレートとは?
では、コンパウンドチョコレートはどうなのでしょう。コンパウンドチョコレートは、ココアバターの代わりに植物油脂を使ってつくられています。
- カカオケーキ(カカオの固形分)
- 砂糖
- 植物性油脂
特徴は以下です。
- テンパリング(温度調節)をする必要がないので簡単に加工できる
- 常温に強く、溶けにくい
- コストが安い
つまり、「手軽で扱いやすい」のがコンパウンドチョコレートの魅力なのです。
クーベルチュールチョコレートとの違い
コンパウンドチョコレートに対して、クーベルチュールチョコレートはプロのパティシエやショコラティエがよく使う、製菓用チョコレートです。
【EUにおけるクーベルチュールの規格】
EUでは「クーベルチュールチョコレート」は以下の条件を満たす必要があります:
- 総カカオ固形分:35%以上
- ココアバター:31%以上
- 無脂カカオ固形分:2.5%以上
- 代用油脂(植物油脂など)は一切使用不可
このように、油脂はココアバター100%であることが大前提。日本では明確な法的規格はありませんが、輸入品や専門店ではこのEU基準を参考にしているケースが多く見られます。
クーベルチュールはツヤと口どけが魅力
クーベルチュールは、カカオバターが入っていますから、テンパリング(温度調整)を正しく行う必要があります。そうすることで、チョコレートに
- 美しいツヤ
- シャープでパリッとした割れ感
- 口の中でなめらかに溶けるくちどけ
が生まれます。テンパリングには技術が必要です。テンパリングがされていないクーベルチュールは口どけがいまひとつ。油脂が白く浮いてしまう「ブルーム」現象が起きたような味になります。
ショコラティエがクーベルチュールにこだわるのは、やはりカカオバターならではの口どけ、そしてカカオならではの風味があるからです。
「どちらが上」ではなく、「どう使うか」
コンパウンドチョコレートは扱いやすさや価格の面でメリットがあり、クーベルチュールは繊細な風味と質感が魅力。そのため、必要に応じて使い分けられています。
- 手軽でリーズナブルなお菓子作り → コンパウンド
- 本格的なボンボンショコラやチョコレートケーキに仕上げたいとき → クーベルチュール
カカオの価格高騰に対応するコンパウンドチョコレート
そしていま、高品質なコンパウンドチョコレートが開発されています。カカオの価格高騰によって、カカオ以外の材料を使った、美味しいチョコレートを作る動きが業界で活発になっているからです。
コンパウンドチョコレートのよさは、植物性油脂は、クーベルチュールでは対応が難しいことも叶えられます。硬さ、溶ける温度や、口どけなどの食感とともに、作業のしやすさも調整することができます。
チョコレートの裏面表示に、「ココアバター」や「植物油脂」と書かれているのを見たことはありませんか?
何気なく選んでいたチョコレートも、油脂の違いを見ると面白いと思います。
これからも、コンパウンドチョコレートの進化が期待されます。
text チョコレートジャーナリスト 市川歩美