こんにちは。チョコレートジャーナリスト、ショコラコーディネーターの市川歩美です。
東洋経済オンラインで、今日私(市川歩美)の執筆記事が公開されました。4月18日に、ゴディバ ジャパンの親会社VM2 Holdingsが、ピエール マルコリーニを買収したことを発表。速報として、チョコレートジャーナルで記事にしましたが、より詳しくまとめたので、こちらで補足とともにご紹介します。
「ピエール マルコリーニ」はなぜ買収されたのか(東洋経済オンラインの記事)
東洋経済オンラインの記事は以下です。
「ピエール マルコリーニ」はなぜ買収されたのかライバルのゴディバ展開する会社の傘下に
テキスト 市川歩美
https://toyokeizai.net/articles/-/668267
4月18日に発表があってすぐ、ゴディバ ジャパンのCEOであり、VM2のCEOでもあるジェローム・シュシャン氏に直接お話を伺い、記事にしました。
写真はゴディバ ジャパンのオフィスにて。シュシャン社長は、ゴディバとピエール マルコリーニのチョコレートとともに写っていますね。
日本でゴディバとピエール マルコリーニの親会社が同じになる
詳しくは、東洋経済オンラインの記事を読んでいただきたいのですが、ポイントはここです。
買収、という言葉のイメージから、ゴディバがピエール マルコリーニを支配してしまうのか、みたいなイメージを持つ方がいそうですが、それはありません。ゴディバとピエール マルコリーニは、どちらかというと兄弟になったようなイメージです。
正確には、ピエール マルコリーニは日本も含め、世界のピエール マルコリーニを、英国のファンドが中心となって展開していましたが、その英国のファンド(と、その他の個人株主など)から、ゴディバの親会社が全株式を取得して、英国のファンドなどから変わってゴディバの親会社の参加になった、ということになります。
それによって、親会社が同じになります。しかしブランドの運営は完全に分けて行なっていく、というわけです。
ゴディバとピエール マルコリーニのチョコレートの違い
チョコレートジャーナルの読者のようなチョコレートファンの方ならすぐに、そうそう、と頷くと思いますが、ゴディバとピエール マルコリーニは、同じベルギーのチョコレートブランドですが、全くスタイルが違い、歴史も異なります。
チョコレート自体がまず、違います。
ピエール マルコリーニのチョコレートは、小ぶりです。ベルギーにフランスをミックスしたようなスタイルで、マルコリーニさんのルーツでもあるイタリアを感じることも。洗練されていてスタイリッシュです。
ゴディバはもちろんモダンに進化しながらも、どちらかというと大ぶり。食べごたえがあるクラシカルなベルギーチョコレートの歴史を大切にし、ベルギーチョコレートの伝統的な型抜きの製法をしっかりと継承しています。
生まれた年は69年違うベルギーの輝かしい2つのチョコレートブランド
ピエール・マルコリーニ氏(左)とピエール マルコリーニのチョコレート(写真:ピエール マルコリーニ提供)
ブランドの歴史の違いも書いておきましょう。
ピエール マルコリーニは、1995年にベルギー・ブリュッセルで創業しました。すでに20年以上前から、カカオ豆からチョコレートを一貫製造するスタイルを続けています。日本には2001年、東京銀座に初上陸し、国内に9店舗を構えています(2023年4月現在)。
ゴディバの歴史は古く、1926年にベルギー・ブリュッセルで創業しています。日本には1972年、日本橋に上陸。高級チョコレートブランドとして日本で他を圧倒する知名度があり、日本全国に350店近い店舗を展開しています。
ビジネスとクリエイティビティのマリアージュ
私がショコラティエなら、と想像すると、親会社が、全くチョコレートのことをわからない会社よりもわかってくれる会社のほうがよいな、などとシンプルに思うのです。
「ゴディバでの経験を持つ私たちVM2は、”職人”と”ビジネス”の両方を理解しているからです。シェフを尊敬し、マーケティングや店舗運営、製造現場についても知見があります。シェフのクリエーションを商品として提供し、経済的に回るシステムが作れる。私たちのバックアップによって、マルコリーニ氏はこれまで以上にチョコレートのクリエーションに集中できるでしょう」。
「われわれはシェフをリスペクトしています。クリエイティビティとビジネスのマリアージュですね」(シュシャン氏)
職人の仕事を評価し、尊重する人にとって、クリエイティビティがこれからも尊重されるかどうかが、大きな関心ごとでしょう。
シュシャン氏は、記事にも書いたようにあっさり、ゴディバはゴディバ、マルコリーニはマルコリーニで、きっちり分けて、これからもマルコリーニのDNAをもちろん尊重する、とおっしゃっていました。
ということで、マルコリーニファンのみなさん、安心してください!
ベルギーチョコレートの盛り上がりに期待
世界にその名を轟かせるベルギーチョコレート界の大スター、ゴディバとピエール マルコリーニ。
この2つのブランドが今後大きく展開をみせれば、相乗効果でベルギーチョコレートが盛り上がるかもしれませんね。
ベルギーのチョコレートには、フランスとは違った魅力があります。トラディショナルなチョコレートは型抜きで大きめ。親しみやすさが大きな魅力。今は、現代的に進化したベルギーチョコレートも多数あります。
私は長いチョコレート愛好家ですので、マルコリーニは日本上陸前からですから25年くらい、ゴディバに至っては、(2月のananなどに書いていますが)ファンすぎてかつてアルバイトしたことがあるほどです。
マルコリーニがゴディバ化することはないし、ゴディバもマルコリーニ化することはないと、わかったでしょうか?チョコレートファンは、ひとまず安心しましょう。
2ブランドともに、日本全国に大勢のファンを抱える、輝かしいスターチョコレートブランドですね。私は、今後を楽しみにしつつ、この展開がベルギーチョコレートに限らず、高級チョコレート全体の盛り上がりにつながることを、期待しています。
text チョコレートジャーナリスト 市川歩美