こんにちは。チョコレートジャーナリスト、ショコラコーディネーターの市川歩美です。
今日は、仕事をしていて感じることを、ちょこっとだけ書きます。SDGsウォッシュについて。
SDGsウォッシュとは
SDGsウォッシュとは、国連が定めたSDGs(持続可能な開発目標)に、取り組んでいるとうたいながら、実態が伴っていない取り組み、ビジネスのことです。
イメージや広告を使って、実態以上に良いとりくみをしているように(現実以上におおげさに)発表、演出されることから、消費者が、事実以上の活動をイメージし、思い込んでしまうケースがあります。
SDGsはイメージではない
ところでそもそも、SDGsでブランディングする、というコンセプトが(ごめんなさいですが)好きではないのは、私だけでしょうか。
企業は価値をあげなくてはならず、そこにブランディングが関わるのはもちろんです。イメージアップのための予算を割き、アピールする必要があることがわかります。
しかし「SDGsを使って」となるとどうでしょう。現実はイメージではありません。きれいなストーリーではなく「実態」を踏まえた「現実的な内容」が伴っているかどうかが全てです。
例えば、世界をよくする(例えばカカオ農家やチョコレートの未来を救う)と、PRにSDGsを軸に掲げながら、よく聞けばイメージほどではない活動があったとしましょう。
実際そういう事例にふれると、企業イメージはかなりダウンします。考えたくないですが「もしかしたら、活動の目的のメインは、ブランディングかPRなのか」と。
「世界の不平等や貧困、飢餓に苦しむ人々の深刻な問題を解決する」と掲げ、人々の注意を引きながら、結局利益を得るのは消費国の、企業の、あなたたちなのかーー。
もし私がそういう事例に触れたら、虚しいというか、人として恥ずかしい気がします。
SDGsを掲げて商品を作り、PRまでするなら、最低でも現場が抱える具体的な状況や、問題・背景を把握し、なにがどうどのくらい改善されるかの見立て、目標が明確である事は、いうまでもなく必要だと思いますが、みなさんはいかが思われますか?
イメージアップのかわりにイメージダウンに
海外では、SDGsウォッシュを厳しくチェックする組織があります。日本にはそこまでの事はありませんね。
SDGsを軸に掲げた活動に「うすさ」を感じた途端に、イメージアップどころか大きなイメージダウンになっていることを忘れてはいけません。
取り組みに便乗して、利益を得た人のイメージもダウン。利益を優先し、深く物事を考えられない人、と判断されても仕方ありません。
検証することなく、アクセスアップのために大げさに仕立てて拡散したメディアもイメージダウン。
難しい問題ですが
「やっぱり結局なんだかんだいっても、利益を得るのは消費国の企業やそれに関わるひとたちか」というのはカカオ産地に関わり、真剣に改善を願う人ほど、やりきれないのです。私レベルでも心底がっかりします。
スタイリッシュでおしゃれっぽく仕立てられているほどに、うすさが目立つのは皮肉なこと。SDGsは、ファッションでもスタイルでもないのです。
地に足のついたリアルな活動に対しては、心からリスペクトします。ある程度話をきけば、表面にある向こう側が透けて見えることは多く(心意気のようなものも)、私も微力ながら出来る限りの応援をします。
チョコレート愛好家、消費者のみなさん。もしチョコレートの未来を考えたいと思ったら、情報に慎重になってくださいね。みなさんが考える以上に、難しい問題が山積しているのです。
私のできることなどは、カカオの歴史を考えれば小さすぎてどうにもならないと、力を落としながらの多い日々ですが、SDGsを専門とする方や、関係者の方と話しながら、チョコレート・カカオにまつわる現状を少しでも良い方向に変えるには、と頭をひねっています。
解決策がすぐ見つからなくても、自分がよければよい、でなく、SDGsは相手やまわりがよくなるように、と動くことです。そういう視点でみてください。SDGsウォッシュかSDGsかを見極めるのは、とても重要です。
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(テキスト 市川歩美)