CCCとは?チョコのミシュランではありません 正しい理解を!

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こんにちは。チョコレートを主なテーマに掲げる、ジャーナリストの市川歩美です。今日は、サロン・デュ・ショコラパリが開かれると、聞くかもしれないCCCについて。(C.C.C.表記されることもある)

事実と異なる発信が多いので、まとめます。チョコレート業界で仕事をする方は今、入れ替わりが激しく、あやふやな情報を信じてコピペ発信されることも多いです。そもそも、パリのことは、みなさん、詳しくわからず、なんかすごい、みたいになっているのでしょう。メディアの方は、特に参考にしてください。

目次

CCCはチョコの世界のミシュランではない

結論からいえば、CCCの評価は、厳格な技術審査や国家的試験を経て授与されるようなものとは、性質がまったく異なります。

たとえば M.O.F.(国家最優秀職人章) や クープ・デュ・モンド・ドゥ・ラ・パティスリー のように、世界的に知られる権威あるものでなく、高度な実技審査を伴いません。

CCCに厳しい技術試験はなく、愛好家による感覚的な側面が大きいものです。

さらに大きな特徴は、「審査を願い出たブランドのみが対象になる」という点です。

日本はCCCへのエントリーが非常に多い国です。世界には、評価を申請しないブランドのほうが圧倒的に多いのが実情です。取材を重ねる中で感じるのは、フランスのブランドでさえ、CCCへの出品にそう興味を持っていないブランドが多いです。

「評価してほしい」と願い出たブランドだけが評価の対象。

そのため、CCCを「チョコレート版ミシュランガイド」と伝えられることがありますが、大きな間違いです。ミシュランガイド は、原則として申請の有無にかかわらず、幅広く店を調査・評価するからです。

世の中には「◯◯セレクション」といったような、応募すると評価してもらえるしくみが多いです。もちろん、そのレベルや性質はさまざまですが、「評価してほしいと願い出て評価を受ける仕組み」と、「平等にすべてを対象に評価する仕組み」とでは、思想そのものが違います。

日本人はフランスの評価を得たい?

日本は「世界で最もCCCに審査を願い出る国のひとつ」とよく言われます。私もそう思います。

背景には、「高い評価を得た」と外に示せるメリットがあるでしょう。ブランディングや売上向上につながる可能性があり、とりわけ日本市場は「パリで(海外で)・・・賞」といったようなふわっとした評価に魅力を感じる人が多いからかもしれません(私も昔はそうでした)。

一方で、CCCは予選もなく、誰でも出品できます。

そのため、もちろん職人としてパリで評価されたい、挑戦したい、励みにしたいという、純粋で前向きな出品動機も存在するはずです。目標はひとぞれぞれ。目標をもって技術や表現を磨こうとする姿勢は、素晴らしいと思います。

私は、日本におけるCCCへの積極性は、ビジネス的合理性と、職人としての向上心。その両方が重なり合ったものといえるのではないかと私は考えています。

ミシュランの審査とは全く違う

審査方法も、CCCとミシュランでは根本的に異なります。

ミシュランガイド は詳細な基準こそ公表していませんが、その審査が極めて厳しいことで知られています。しがらみのない調査員が匿名で、予告なしに店を訪れ、料理のみならず、店全体を総合的に評価します。

海外で三つ星シェフに取材した際、こんな言葉を聞きました。「いつ審査員が来るかわからない」。だからこそ、「常に最高の料理とサービスを提供し続けなければならない」。評価は「特別な一日」ではなく「日常の質」に対して下されるわけです。

一方、CCCはそうではなく、作り手が「審査用してもらうために」作ったチョコレートを持ち込みます。フランスの愛好家の嗜好を見据え、時間をかけて準備します。

審査方法は、CCCはフランスのチョコレート愛好家による試食です。基本、持ち込まれたチョコだけが試食されます。ミシュランとは全く異なるのが、わかるでしょうか。

フランスの職人はM.O.F(国家最優秀職人章)をめざす

フランスには、CCCで評価を得たい人が日本ほどいない気がします。

それはなぜか。考えてみると、「権威」と捉えられるものが、違うのではないでしょうか。フランスで「誰もがすごい職人」と認める称号といえば、まず挙がるのが M.O.F.(国家最優秀職人章) です。

これは感覚的なふわっとしたものでなく、極めて厳格な試験を経て、国から与えられる称号。技術、理論、完成度、すべてにおいて高水準が求められ、試験を突破しなければ受章できません。誰もが最高峰、とフランスで認められているのは、M.O.F(国家最優秀職人章)です。

またフランスや世界で「世界最高峰のパティシエ・ショコラティエ」といえば、クープ・デュ・モンド・ドゥ・ラ・パティスリー で代表選手になった人、あるいは優勝した人物の名が挙がることも多いでしょう。こちらも明確な競技形式のもと、技術と創造性を競い合います。

これらと比べると、CCCとの違いがわかってくると思います。

M.O.F.やクープ・デュ・モンドは、厳密な基準と試験によって力量を測る制度。一方、CCCは愛好家らしい感覚的で文化サークル的なイメージがあり、そこには「味わいの好み」や「これまでの関わり」といった、より感覚的なものです。

言い換えれば、技術を客観的に評価するのか、感覚的で愛好家グループ的な3段階評価なのか、このニュアンスの違いはフランスでは、はっきりしているのではないでしょうか。

CCCはフランスの愛好家による評価

CCCとはクラブドクロクールドゥショコラという、フランスのチョコレート愛好家クラブの略。フランスの人の愛好家団体です。

そのため、どうしてもフランス人が好きな味が評価される傾向があります。私が個人的に斬新で先鋭的、と感じたブランドが驚くほど評価が低かったことがあります。フランス人が好きな味のバランスではなかったのです。

私が10年前に書いた記事を参考にしてください。古い記事ですが当時、多くのブランド、メディアが参考にした記事です。

(注意)理由はわかりませんが、日本ではいつのまにかC.C.C.と「.」を入れて書かれていることが多いです。

金・銀・銅は賞ではなく3段階評価

そして「金賞」という表記自体が間違いなのでメディアのみなさん、特に気をつけてください。

持ち込んだチョコレートは、金・銀・銅の3段階で評価されます。

強調したいのは「賞」ではなく「評価」です。にもかかわらず、「金賞を受賞しました」と表現するブランドを見かけます。しかし実際には、ABC評価の「A」のような位置づけです。

さらに言えば、CCCの「金評価」は、少数に与えられるものではありません。今年、日本で評価を願い出たブランドのほとんどは、金評価だったそうです。

その点でも、三つ星がごく限られた店にしか与えられない ミシュランガイド とは大きく異なります。優勝は一人だけ、という世界大会とも違います。ミシュランの三つ星が「ごく一部の頂点」であるのに対し、CCCの金評価は、一定基準を満たしたという「等級評価」です。

CCCのアワードとは?賞とは「ナントカ賞」

「アワードを受賞した」と聞くこともありますよね。その場合これは、評価とはべつの「特別賞」なのだな、と感じてください。

毎年、「ナントカ賞」という感じで賞があります。年ごとに新しい名称が生まれ、自由度が高いなあという感じ。自由すぎておもしろいほどですが、毎年のように、新たな名の賞が登場します。

その自由さが愛好家団体らしさですね。厳密なコンクールや資格と異なり、賞のネーミングも自由。評価とば別のレイヤーにあるので、毎年決まった「・・・賞」もないし、基準もない気がします。私自身は、「へえ、今年はこんな名前の賞なのかー」と、ゆるめに?眺めています。

近年は、海外から審査を願い出たブランドの中から2ブランドほどが選ばれる感じで「良いブランドが応募してくれましたねー、応援していますよ」と温かなニュアンスを感じることもあります。なんとなく、エールに近い空気を帯びていることも。

CCCにおける「アワード」は、厳密な競技結果などではなく、その年ごとに気になるブランドに与える特別賞。評価制度とは別のレイヤーにある、と覚えておいてください。

フランス枠と海外枠は別

CCCは、海外ブランドからの審査依頼を受け入れていますが、フランスと海外を明確に分けているのも特徴です。フランス枠の評価と、海外枠の評価は違うのです。審査を申し込んだ日本などの海外ブランドは「外国人部門(AWARD ÉTRANGER DE L’EXCELLENCE)」に分類され、フランス本国、べつの国、としっかり区別されています。

権威や評価を求めないブランドも増えた

世界には、星の数ほどチョコレートブランドがあり、チョコレート職人がいます。

先に書いたように、本格的に職業として頂点を目指すの人は、フランスなら M.O.F.(国家最優秀職人章) に挑戦、あるいは洋菓子の世界大会 クープ・デュ・モンド・ドゥ・ラ・パティスリー の代表選手を目指す、といった道が王道でしょう。

長年チョコレートの世界を取材していますが、ここ数年、CCCや サロン・デュ・ショコラに関心を示していないフランスのショコラティエや職人がぜんぜんめずらしくないのです。

かつては何かしら重めな「権威」や「お墨付き」みたいなものがあり、それを示すとすごい、みたいな空気がありましたが、今は、風向きが違います。

独自のやり方で着実にファンを増やすブランドもあれば、自らの発信で独自のスタイルと世界観を打ち出し、圧倒的な支持を集めるブランドも。

テクノロジーも進化しました。もはやどこかのお墨付きがなくても、良いものは良いと伝わりますし、自社で発信ができます。毎年パリで取材をしていると、新しいブランドも老舗も、昔と変わっているのです。

私はその変化をとても自由で、頼もしいと思っています。

Xにも投稿しました。

長くチョコをみてきていますが、なんというかいまは「どんな賞をとったか」など以上に「私はこれがすき」「これにときめく」と、自分の感覚に純粋な人が多い気がします。誰かの評価でなく、自分の心が動くものを。そんな自由な軽やかさがかつてより確かに広がっている気がして楽しいです。

最後に。

ジャーナリストの立場から、問題提起をするとすれば、今は「なんとなくすごい」「世界的に評価された」あいまいな情報が、ふわっと、別の輪郭をもって拡散してしまう時代だということです。

チョコを専門とする立場からみて「おいおい、それはないよ」と驚いてしまうことも、正直少なくありません。職人さんも、実は全体感をご存知ない方が多く、彼らはチョコ作りのプロであり、ときにビジネスオーナー。情報のプロではないのです。

よい話や正しい話はどんどん広めたいのですが、業界のためにも逆は困ります。一般の方もすべての情報を鵜呑みにしないこと。メディアに関わるプロのみなさんなら、専門家に確認する、裏どりは基本中の基本です。

私はどこの企業にも属していません。立場に縛られず、日本に正しい情報が届くよう、できる限りニュートラルにチョコレートの世界を伝えていきたいと思っています。

持ち上げることも、否定することもなく、事実を伝えられる立場の人が、どの業界にも必要ではないかと思います。

ジャーナリスト・市川歩美

以下はかつてご要望があって書いた記事です。関心がものすごく強い方のみどうぞ。

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