こんにちは。チョコレートを主なテーマに掲げる、ジャーナリストの市川歩美です。今日は、サロン・デュ・ショコラパリが開かれると、ところどころで聞くかもしれないCCCについて。(C.C.C.表記されることもある)
事実と異なるとメディアにとっても、消費者にとってもよくないので、まとめておきます。チョコレート業界で仕事をする方は今、入れ替わりが激しく、ともするとあやふやな情報を信じてコピペ、発信してしまうこともあるかもしれません。基本事項のみ、書いておきます。
CCCはチョコの世界のミシュランではない
多くのプロは理解していますが、まだ時々みかける間違いです。
CCCがチョコレート版ミシュランガイド、などと言われることがありますが、そういう性質のものではありません。
いろいろな意味で違いますが、まず、CCCは基本「評価してもらいたいと願い出たブランド」のチョコレートだけが評価されます。世界に星の数ほどチョコレートブランドがありますが、当たり前とはいえ、ほとんどのブランドはCCCに評価を願い出ていません。
評価をお願いするブランド=評価してもらって高い評価を得たら、そのことを外に表明して示したい、というのがあるでしょう。さらに挑戦したい、励みにしたい、ということもあるでしょう。それは素晴らしいことですね。
世の中には「・・・セレクション」というような、審査を願いでると審査をしてもらえるしくみは多いです。それとは全く違う性質ですが、「評価してほしいと願いでて評価してもらう」という点においてはCCCは同じタイプです。
一方でミシュランガイドは「レストランが願い出る出ないにかかわらず」評価されます。しがらみのない調査員が匿名で訪れ評価するというもの。店が願いでなくても、評価されて星をとる、というわけです。
ミシュランの審査とは全く違う
審査内容も、CCCとミシュランとは根本的に違う、ということをつけ添えましょう。
ミシュランは詳細こそ明かされないものの、その審査が非常に厳しいことで知られています。
ミシュランの場合、いつ審査員が訪れるかわかりません。ゆえに「常に」レストランはよい料理やサービスを提供し続けていなくてはなりません。一方、CCCは審査のためのチョコレートをブランドが「審査用に」作って持ち込みます。フランスの愛好家の傾向を見据え、時間をかけてしっかり準備できる。審査用に特別に作って提出するのです。
審査方法も、ミシュランと比べると、フランスのチョコレート愛好家による評価はそこまで厳格ではない印象です。もちろん、よい作品が評価されるのは当然ですが、そこには「気持ち」や「これまでの関わり」のようなものの反映がかいまみえ、感覚的なものが多分に込められているのを感じます。愛好家らしいあり方のようにも見えます。
CCCはフランスの愛好家による評価
もうひとつは、CCCとはクラブドクロクールドゥショコラという、フランスのチョコレート愛好家クラブの略。フランスの人の愛好家が審査するものである、ということもつけ添えます。
私がかつて斬新で先鋭的だな、感じたブランドがありましたが「フランス人愛好家は好みそうにないかも」とも感じていました。するとやはり評価はかなり低かったです。
参考になるかわかりませんが、私が10年前に書いた記事がオールアバウトにありますので、古いのですが参考にしてください。当時、多くのブランド、メディアが参考にした記事です。

(注意)フランス語ではセーセーセーなどと呼ばれることもあるようです。理由はわかりませんが、日本ではいつのまにかC.C.C.と「.」を入れて書かれていることも多いです。
金・銀・銅は賞ではなく3段階評価
会員により持ち込まれたチョコレートは、金・銀・銅の3段階で評価されます。審査された後の評価は、3段階です。よく「金賞」と話すブランドがありますが、賞ではない、ということを覚えておきましょう。厳密には、通信簿の3段階評価なので、評価です。
ここもミシュランとの違いですが、CCCの金評価ブランドはかなり多めです。関係者によると、今年、日本で評価を願いでたブランドのほとんどは金の評価だったそうです。ミシュランの三つ星店のように少数ではありません。
CCCのアワード・賞とは「ナントカ賞」
アワード、賞はなにか、というと「ナントカ賞」という感じです。審査を願いでたブランドの中から、評価とは別にわりと自由に「・・・賞」というものが作られているイメージ。毎年決まった「・・・賞」があるわけではなく、基準もないように思います。
私はかつては、へえ、今年はこんな名前の賞を作ったのね、自由でいいな、という感じで見ていました。
かなり自由で柔軟な印象で、あらゆることが結構変わりますが、現在は海外ブランドの中から毎年2ブランドが選ばれ、「すばらしいブランドですね、応援していますよ」といった温かなニュアンスを感じる形でアワードを受けています。
CCCのアワードの特徴がひとつ。フランス本国枠と海外枠を明確に分けています。審査を申し込んだ日本などの海外ブランドは「外国人部門(AWARD ÉTRANGER DE L’EXCELLENCE)」に分類され、本国・フランス枠とは区別されています。
権威や評価を求めないブランドも増えた
世界には星の数ほどチョコレートブランドがあります。 私がいうまでもありませんが、世界にはこちらに評価を願いでないブランドの方が多く、各国で取材していてもその印象は変わりません。
長く広くチョコレートを見てきていますが、時代の変化を日々感じます。たとえば、かつては「お墨付き」「印」を得てわかりやすく強めに外に示すスタイルがありましたが、今はそうしたものとは無縁で、独自のスタイルと世界観で圧倒的な支持を得ていたり、多くの人を惹きつけるエネルギーあるブランドが増えています。
テクノロジーも進化しました。独自で活動も発信もできる時代です。毎年パリで取材をしていると、新しいブランドも老舗も、驚くほど動きが変化しているのがわかります。そしてその流れは、私にとってとても楽しく、自由で頼もしくもあります。
Xにも投稿しました。
長くチョコをみてきていますが、なんというかいまは「どんな賞をとったか」など以上に「私はこれがすき」「これにときめく」と、自分の感覚に純粋な人が多い気がします。誰かの評価でなく、自分の心が動くものを。そんな自由な軽やかさがかつてより確かに広がっている気がして楽しいです。
ジャーナリストの立場から、今の時代に問題があるとすれば、間違った情報やあやふやな情報の拡散のしやすさがあげられます。少なからずプロやメディアの方、正しい情報をもとめる多くの方のために情報を届けられるよう。そんなことを思いながら、日々仕事をしています。
ジャーナリスト・市川歩美
以下はかつてご要望があって書いた記事です。感心がものすごく強い方のみどうぞ。


