こんにちは。チョコレートジャーナリスト、ショコラコーディネーターの市川歩美です。
みなさん、昨日5月24日(日)の日本経済新聞NIKKEI The STYLEの記事への、メッセージやコメントをありがとうございました。「原宿はちみつ 都心の花を凝縮」として、取材記事を書きました。
NIKKEI The STYLEでコロンバンの養蜂について書きました
記事の内容は、洋菓子の老舗「コロンバン」が、原宿のビル屋上で行ってきた養蜂についてです。
コロンバン本店は、原宿で53年続いた老舗。その本店ビルは、2020年の再開発にともない、取り壊されることになってしまいました。
多くのファンに、惜しまれながらの取り壊し。同時に2010年から屋上にいたミツバチも引越しをすることになり、ミツバチたちを大切にお世話する社員の方々は……。
そんな、お話です。
そもそも原宿で、養蜂?という方が多いと思います。私は以前から活動を知っていたので、原宿でお花を見かけるたびに「コロンバンのミツバチ、いるかなー」なんて、思っているのです。
原宿はちみつについての日経記事
昨日の日本経済新聞を、読めなかった皆さんのために、小さいですが、記事の写真を貼っておきますね。
実際は、新聞の全面、ばーっ、と広がる大きな記事。カメラマンさんによる写真がきれいで、ハチミツもお菓子も一段とおいしそう。
私は朝、新聞を両手で広げ、なんだか春がきたような気持ちになりました。
記事はコロンバンのファンのみなさまにも広く読まれ、反響が大きく、4月27日の今年の初採りのハチミツは「原宿はちみつヌーヴォー2020」として販売され、即完売したそうです。
コロンバンの社員による養蜂
このあとは、私が撮影した、取材時(4月27日の早朝)の写真を、番外編として紹介することにします。
養蜂は、NHKにほど近い、コロンバンの自社ビルの屋上で行われています。原宿本店サロンから徒歩10分なので、ミツバチの採蜜エリアは、それほど以前とかわりません。
巣板の両面に、ミツバチが集まっています。
巣箱の出入り口にいるミツバチたち。ミツバチたちは生まれた巣箱を忘れず、必ずここに戻ってくる、って、すごいことですよね。
私などは、いまや「Google マップも持ってないのに一体どうやって代々木公園からここまで帰ってこれるんだろう」などと思ってしまう。でもそれは私だけではないはずです。考えるほどに、私は、ミツバチに完全に負けている気がします。
原宿はちみつを使ったバウムクーヘンとプリン
甘い香りがするとミツバチが近づいてきて、かわいいのです。写真は、バウムクーヘンをお皿にのせたら早速、ミツバチがやってきました、という風景。
さらには、私がペンで紙にメモしていたら、私の指にぷうん、とミツバチがきて、2回も人差し指に止まってくれたのです。
(余談ですが、私は、昔から人間以外の生き物が安心するなにかを持ちあわせているのかもしれず、たびたび動物や、昆虫たちが、友だちみたいにそばにきてくれます笑)
Instagramにも投稿しましたが、私は原宿はちみつを使ったバウムクーヘンと、チョコレートを使ったマーブルケーキが大好きです。おいしいんです、とても。
今はバウムクーヘンのみオンライン販売中です。再販売されたら、チョコレートを使ったマーブルケーキもぜひおすすめします。
カラメルのかわりに、原宿はちみつを添えるプリン。おいしそうでしょう?(とっても美味しいです)
見逃していた「価値」を見直し、新しい日常に生かしたい
原宿交差点が再開発され、原宿で53年続いたコロンバン本店のあのビルが取り壊されるーー。そうきいて、私はお店のことや集っていたお客さまのこと、ミツバチのこともなんども、ぐるぐる考えました。
コロンバン原宿本店は、ついに取り壊されました。53年の歴史があるビル。理由は「神宮前六丁目市街地再開発事業」(再開発)が決まったからです。
取材でコロンバンさんに届いた、閉店を惜しむ800通もの及ぶメッセージを拝見しました。誰もがご覧になると涙が出そうになると思います。そうですよね、これまで大好きだった場所がなくなるのは、やっぱり悲しい。
外出自粛により、生活や考えを見直した方が多いと思います。私も色々考えました。例えば、次から次へと新しいものを作っては、昨日より今日、今日より明日、次から次へと大急ぎ。
よいもの、よいこと、とはなんでしょうか。
得することを優先するあまり、バブルのように表面だけをきれいにしたり、盛っておおげさに見せたり。そんなことが増えて、麻痺してそして見ないふり。ぐいぐい押し進めたことの途中に、価値はなかったでしょうか。
忘れそうだったけど、ぼんやりと思い出した「本当によく考えたら」価値のあることや存在、人。それらをもっと、この自粛期間に思い出したいです。考えたことを、これからに生かしたい。
都市の再開発は、メディアと連動して盛大にPRされます。うけそうな演出やモノがぎっしり、ピカピカの商業施設に人々が押し寄せ、オープンとともに盛大なアピール。でも、その向こうに静かに失われた価値があったと想う、心の余白を、私は持っていたいのです。
再開発は、経済効果、進化、チャンス等の大きなメリットと引き換えに、長年その土地に集ってきた人たちの憩い、愛おしい風景やものを壊し去った後に成立しますね。
原宿のコロンバンには、多くの思い出があります。原宿の真ん中にあったビル。あの小さな3階建ての屋上に、たくさんのミツバチが住んでいて、それを見に行った思い出はずっと私の中にあります。この記事は、再開発とともにお引越ししたミツバチたちの、今を伝える記事です。
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チョコレートジャーナリスト 市川歩美