こんにちは。チョコレートジャーナリスト、コーディネーターの市川歩美です。今日は、アトリエ・キュイエールの山﨑陽子さんのことを書きます。
私のフォロワーさんや読者のみなさんに人気があったアトリエ・キュイエール。そのショコラティエールだったのが山﨑陽子さんです。
陽子さんはきれいでセンスがよく、心がやさしくて、厳しいがんばりやさんで、人にもチョコレートにも想いを全力でこめていました。
チョコレートにはその人が現れています。チョコレートは陽子さんそのものでした。
うまい言葉が見つかりませんが、ある意味、陽子さんのショコラは脅威でした。
初めて味わって、これは凄いな、と感じました。私が勝手に思っていただけのことですが、大切にしなくては、とも思っていました。日本のバレンタインの渦巻くようなエネルギーやあれこれに、どうか飲み込まれてしまわないでと。
私がメディアでご紹介させていただくたび喜んでくださって、必ずお礼のメッセージをくださり、さらに「市川歩美さんが紹介してくれました」と、毎回うれしい投稿をしてくださっていた。そういうことを私はずっとずっと、覚えています。
ぼんやりした記憶ですが
「なんでも心をこめて一生懸命される人だから、どうかがんばりすぎないでね」
私はふとそういいたくなって、銀座で売り場に立つ陽子さんに伝えたとき「えー泣いちゃう」なんて、片手の人差し指を目の下にもってきて、あのかわいい小さな声でおっしゃった、そのときの陽子さんの様子をずっと覚えていました。
ご体調のことをすこしだけ聞いたのはその後しばらくしてからです。
陽子さんのチョコレートボックスは、やさしいお姉さんから愛情をこめたおいしいお弁当を渡されたような気持ちになる。そんなチョコレートは世界中どこをさがしても、他のどこにもありませんでした。
お姉さんのお弁当をもう受け取れない私は、とてもさびしいです。
山﨑陽子さんはご病気の療養中、10月29日に天国へ旅立ったそうです。私はいつまでも陽子さんのことや陽子さんのチョコレートのことを忘れないと思います。
福岡のアトリエへも訪れました。センスよくてやさしく、きれいにぴたりと整理されていました。それもまた陽子さんそのものでした。
text & photo チョコレートジャーナリスト 市川歩美