こんにちは。チョコレートジャーナリスト、ショコラコーディネーターの市川歩美です。
東洋経済オンラインで、昨日3月5日に、市川歩美執筆記事「ガーナで名誉酋長になった日本人が築いた信頼」が公開されました。ぜひご一読ください。
実は、私が尊敬する芸術家・村上隆さんが、ご自身のフェイスブックでこの記事が面白い、とシェアしてくださいました。(心からうれしいとはこういうことか!飛び跳ねました!)
カカオ産地を支援し、ガーナで名誉酋長になった明治の社員
主人公は、明治の社員 土居恵規さんです。SDGsが採択されたのが2015年。土居さんは、その10年前に、初めてガーナを訪れ、2006年から自社の取り組みとして、カカオ農家を支援し続けています。
名誉酋長に任命されたのは2009年。くわしくは記事をお読みいただきたいのですが、2009年、カカオ豆を購入しているアセラワディ村に、井戸を寄贈したことを、深く感謝されての任命です。
ガーナと関わって16年。土居さんは、この3月に定年を迎えますが、今後も酋長として、ガーナの村を支援していきたいと話していました。
記事は以下↓
ガーナで名誉酋長になった日本人が築いた信頼
(東洋経済オンライン text 市川歩美)
チョコレートとSDGs 長年地道に続けている人々がいる
エシカル、サステナブル、そしてSDGs(持続可能な開発目標)。今はこのようなワードがメジャーになっています。ときにそれらがおしゃれで、センスがよい感じが漂うほどに。
しかし、私は違和感を感じることがあります。長年カカオ産地に関わり、SDGs、という言葉すらない時代からされている支援活動に光が当たりづらいからです。
新しく、キャッチーでおしゃれなヴィジュアルで、カカオ産地によいことをしている、というイメージばかりが目立つのは、バランスが悪い気がするのです。
実際、エシカル、サステナブル、SDGsーー。そういう言葉自体すらない頃から、地道に産地を支援し続けている企業や人。カカオ産地に想いを寄せ、美味しいチョコレート作って、多くの人を幸せにしてきた企業が、話題にならないのは残念です。
誤解がないように書きますが、もちろん新しい支援活動も素晴らしいです。時代にあう、新しい表し方は大事で、カカオ産地が抱える現実に、目を向ける人の幅が広がるでしょう。
ただ、目を向ける人が増えるだけでは、そうか、そういうことが起きてるんだー、大変だね、で終わることが多いでしょう。カカオ作っている人は貧しくて大変みたいだね、とさらっとトレンドと並べて話題にするだけで、実は結果「その情報を発信した消費国の企業」に目を向けるだけに終わる可能性があります。SDGsは、カカオ産地で実際に何が実行され、何が変わり、どんな目標た達成されたかが全てです。
カカオ産地支援は、イメージより実態
私は、長くメディアに関わる人間として、こういうことが起きていると考えています。
メディアは新しいものが好き。雑誌などは特にそうで、新しいこと、ヴィジュアルがきれいなことが重要です。よしあしよりも、新しくてきれいなものが掲載されることが往々にしてあるのです。メディアですから、当然のことです。
ただし、テーマがSDGs、となるとあたらしくてきれいなものがよいわけではなくないでしょうか。SDGsは、リアルな活動だからです。イメージ重視で判断するテーマではない。サステナブルとは持続可能なという意味。「持続」は「続ける」ことで、新しいとは逆です。長い時間をかけて、達成するものです。
カカオ産地支援を表立っていわないブランドもある
私が取材すると、長年、大きな取り組みをしているのに活動をアピールしていない企業が多いことに気づきます。理由をたずねると
「あたりまえですから」「いちいち自分からいいことやってますとはあまり……」
との声も。今回の土居さんの活動も、そのひとつでした。「ブランドイメージとの兼ね合い」という声もあります。
そんな状況ですから、私はチョコレートのジャーナリストとして、カカオ産地支援については、できるだけバランスよく伝えることを目指したいです。
カカオ産地と関わり続けて、結果を出す難しさは、私の想像をはるかに超えるレベルです。戦略をたて、長い時間をかけることは、マストです。
多くの企業や団体が、カカオ生産者の問題に目を向け、協業、サポートを続けています。知れば知るほど難しく、私自身の無力さに力を落としそうになる程ですが、できる限り、チョコレート愛好家として、ジャーナリストとして、広く情報をお伝えしていきたいです。
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チョコレートジャーナリスト 市川歩美
*ちなみに、今日、3月6日はガーナの独立記念日(Independence Day)です。ガーナは1957年3月6日に、イギリスから独立しました。