こんにちは。チョコレートを主なテーマに掲げるジャーナリスト、チョコレートジャーナリストの市川歩美です。フランスから輸入、販売されたチョコレートの一部にカビが発生し、三越伊勢丹ホールディングスが自主回収を発表しました。対象となったのは、フランスの老舗チョコレート店「ベルナシオン」のチョコレートです。
三越伊勢丹がチョコレートを自主回収——原因はカビ
2025年バレンタインシーズンに向けて販売されたチョコレートの一部にカビが発生していたことがわかり、三越伊勢丹ホールディングスが自主回収を発表しました。
問題となったのは、フランスの老舗チョコレート店「ベルナシオン」から輸入された「ショコラアソート・キューブ・マヤ」「ショコラアソート ボアット マヤ」の2商品で、合計260個が販売されました。
詳細は以下のリンクから
購入者の指摘を受け、調査したところ、複数の在庫品にカビが確認されたとのこと。原因を調査中だそうですが、今のところ健康被害の報告はないそうです。
オンライン、新潟、名古屋で購入した方は注意してください。
販売地域:①オンライン、②新潟、③名古屋
販売先 :①伊勢丹オンラインにて全国販売、②新潟伊勢丹、③名古屋三越
販売日 :①2025年1月4日~2月2日、②③2025年1月29日~2月10日
販売数量:①200個、②20個、③40個
ベルナシオンとは?
ベルナシオンは、フランス・リヨンにある歴史ある老舗チョコレート店で、1952年に初代モーリス・ベルナシオン氏がリヨンで創業しました。日本ではバレンタインシーズンに三越伊勢丹が輸入販売しています。日本では、高価格で販売されています。
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ベルナシオンのチョコレートは、クラシカルです。
ベルナシオンには、実は私があまり選ばないタイプのチョコレートも割とありますが、「パレドール」はとても好きで、1990年代から折りにふれ、味わっています。以前から味わっているのでほっとするからです。
リヨンの店には何度か訪れました。アトリエを取材させていただいたこともあり、そこでよくわかったのは、職人たちは古くから伝わる機材を使い、昔ながらの製法でチョコレートやチョコレートのお菓子を作っていることです。
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ハンドメイドの高級チョコレートは特に注意すること
フランスの手作りボンボンショコラ(一粒チョコレート)は、その魅力とともに注意すべきこともあります。覚えておくべきことは、賞味期限が短いことと、適切な温度管理をしなければ美味しさや安全性が損なわれることです。
ショコラティエ(チョコレート職人)がハンドメイドで作るボンボンショコラは、フレッシュな材料を使用することが多く、保存方法に注意が必要です。そのため、賞味期限が短いことが多いです。
フランス風の手作りのボンボンショコラは、中心部分(センター)は水分量の多いガナッシュで、生チョコのようななめらかな食感が魅力。その周りを薄いチョコレートでコーティング(アンロバージュ)しています。この製法によって生まれる濃厚な風味と口どけの良さが、多くのショコラ愛好家に支持されていますが、一方で「(早く)いたみやすい」「賞味期限が短い」といったデリケートな性質もあります。
チョコレートになぜカビが?
チョコレートにカビが発生する理由はこんな感じでしょうか。
ガナッシュには水分量が多い
フランス風のボンボンショコラ(一粒チョコレート)は、内部のガナッシュにフレッシュな材料を使っているため水分が多めです。カビの発生リスクが通常のチョコレートよりも高くなります。
外側のコーティング(アンロバージュ)とガナッシュの間に注意
外側を薄いチョコレートで覆っているため、ガナッシュとの間に微細な隙間が生じ、そこに湿気がこもりやすくなることがあります。
賞味期限を過ぎていた
水分量の多いボンボンショコラは、賞味期限が短めに設定されていることが一般的です。適切に保管し、期限内に食べきらないとカビが発生することがあります。
製造工程か輸入販売側に問題があった
製造も輸入販売も、もちろん注意深く行われています。しかし、ブランドから店に並び消費者に届くまでの、温度管理、保存方法、輸送時の状態など、流通のどこかに問題があることもあるでしょう。
私自身の経験——カビを見つけたことも
私の経験談ですが、私も何度かチョコレートのカビを見つけたことがあります。
私は長いチョコレート愛好家&いまや仕事なので、食べてきた量と種類が多いからでもあるかもしれませんが、国内も海外も両方あります。
ボンボンショコラを私はカットしてから味わうので、異変はすぐにわかりますが、見なくても風味がおかしいな、と感じてよくみると、ということもありました。
品質を保つため労力が費やされている
チョコレートとカビについて、少し書いてみました。
高級チョコレートは、職人のこだわりが詰まった特別な一品ですが、その分デリケートな製品でもあります。チョコレートは食品に限らず、安全性、品質を保つために、あらゆるプロセスで多くの労力が費やされていることも知っておきましょう。特に水分量の多いハンドメイドチョコレートを購入後は、適切な保存を心がけ、賞味期限を守って楽しんでくださいね。
text チョコレートジャーナリスト 市川歩美
プチ追記
人間が行うことなら、間違いはゼロにはならないかな、と思うことがあります。問題が起きたら、その対応が重要かなと私自身は考えています。今回は三越伊勢丹さんが丁寧な対応をしてくださっていることでしょう。
私は、10年ほど前に、ある国内のブランドのチョコレートを買ったらカビていて「カビていたんですが」と、電話で連絡をしたことがあります。するとわりとぴしゃりとした強めな口調で「ああそうでしたか。とりかえます。どうしたらいいですか」と対応されたことがあります。さびしかったですね……。
チョコレートが好きな私は、楽しみにしていたボンボンショコラがカビていたことから少なからずショックを受けていたからこそ、その思いを汲んでほしかったのでしょうね。そのお店は今は存在しませんが、その後私はどうしてもそのお店で、最後までお買い物をすることができませんでした。
ただ、これはもうずいぶん昔のこと。それ以来こういった経験はなく、いつも状態よくチョコレートを味わえているのをありがたく思っています。(感謝)