パスカル・ル・ガックが親子でブランドを継承 娘のアメリーさんに聞く

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こんにちは。チョコレートを主なテーマに掲げるジャーナリスト、市川歩美です。バレンタインシーズンですね。先日、フランスのショコラティエ、パスカル・ル・ガックさんと、初来日した娘のアメリーさんにお会いし、お話を伺いました。

パスカル・ル・ガックさんは、これからアメリーさんとともに、親子でブランドを受け継いでいくそうです。今後について、そして日本の印象などついて、うかがいました。

目次

パスカル・ル・ガックさんの娘・アメリーさんが初めて来日

パスカル・ル・ガックさんとは1年ぶりに東京で再会。アメリーさんとは数年前、サン=ジェルマン=アン=レーのお店を訪ねたときに、お目にかかって以来です。うれしい再会でした。

パスカル・ル・ガック東京でパスカル・ル・ガックさん、アメリーさんと市川歩美

市川 アメリーさん、サン=ジェルマン=アン=レーでお目にかかって以来です。初めての日本はいかがでしたか

アメリーさん(以下アメリー): コロナ前からずっと日本へ行きたいと思っていたんです。ようやく来ることができて、本当にうれしく思っています。

写真ではよく日本を見ていましたが、思ったよりも都会ですね。サロン・デュ・ショコラは本当にたくさんの人がいて驚きました。パリのサロン・デュ・ショコラにはよく行っていましたが、日本は初めてでした。こんなにも多くの方が集まるのですね!

それから、パリの会場ではショコラティエがサインをすることはありません。日本ではチョコレートボックスにサインをすると聞いてはいましたが、実際に目にしたのは初めてでした。サン=ジェルマン=アン=レーのお店でも、日本人女性のお客様がいらっしゃるとサインを求めてくださることはありましたが、ここまでとは思いませんでした。

アメリーさんが経営のバトンを受け取る

市川 今年、初めて来日されたのはなぜですか?

パスカル・ル・ガックさん(以下パスカル): 経営面をアメリーに任せることにしましたので、日本にアメリーが来ることで、日本のことも、お互いのこともより深く理解できるようになると思いました。東京にある、このお店「パスカル・ル・ガック東京」もぜひ見てほしかったのです。

市川 アメリーさんが会社の経営を担うことになったのですね。

アメリー: はい。2年ほど前から少しずつ体制を変えてきました。父はショコラのクリエーションを担い、私は経営職として事業を引き継ぐことになります。

パスカル: アメリーが経営を引き受けてくれたことで、私はよりショコラ作りに集中することができます。突然変えるのではなく、時間をかけて移行したいと考え、今があります。大きな変化があるわけではありません。

2008年のオープンから17年

市川 アメリーさんなら頼もしいです。私は以前、サン=ジェルマン=アン=レーのお店で、アメリーさんの手際のよい接客やお仕事ぶりを拝見していますから。

アメリー: ありがとうございます。実は、私は父の店で17年の販売経験があるんです。その前にも、ラ・メゾン・デュ・ショコラで1年、主に包装ですが、仕事をしていたこともあるんですよ。

市川 お父様がシェフを務めていらしたパリの有名メゾン「ラ・メゾン・デュ・ショコラ」ですね。

アメリー: はい。そうです。父と同じ職場にいました。父はオフィスやアトリエにいて、私は現場にいて仕事をしていたんです。

父のショコラとともに育ったアメリーさん

市川 アメリーさんは、子どものころからお父さまのショコラとともに育っているのですね。

アメリー:  私は父のショコラが大好きでした。1986年まで、ずっと父の職場だった「ラ・メゾン・デュ・ショコラ」で育ったともいえます。子どもの頃から、フォーブルサントノレにある本店でショコラを味わい、コロンブ店では、計算機がおもしろくて遊んだり。週末もよくショコラを食べていました。父のショコラで育ったんです。

市川 世界中のショコラファンが羨ましがるようなお話です。子どものころからお父さまと一緒に仕事をしようという考えはあったのですか。

アメリー:  いいえ、なかったんです。学校を卒業した後仕事につき、しばらく働いたのですが好きになれない仕事だったことがわかったので、22歳のときに父に一緒に働けないか、と自分から提案しました。父が独立して、サン=ジェルマン=アン=レーのお店(パスカル・ル・ガック)がオープンするときには、ぜひ働かせてほしいと願い出ました。

市川 実際にお父さまの店で働いてみていかがでしたか。

アメリー: 働いてみたら、とても好きになったんです。短大を卒業したときは「私は絶対に販売はやらない」と思っていたのに、やってみたら大好きでした。お客さまや人とやりとりすることも楽しかったです。

市川 人が好き、販売するショコラも好きなら楽しかったでしょう。

アメリー: 私の仕事はまず人が好きであること、そして相手を認めることが大事です。店内をいつもいきいきと保つことも。おっしゃるとおり、私は父のショコラが好きですからね。自分の子どもが一番かわいいと思うのと同じです。

パスカル: 私たちのショコラは「アルティザンショコラ(職人の手によるショコラ)」です。自分たちが販売するものに誇りを持っていることは、仕事をするうえで大切です。それをみなさんにお届けするのは、喜びにつながりますからね。好きでなければ仕事は続きません。アメリーは常にお客様とよく向き合っていました。

小さなチームで大切に育てる

市川 接客の長い経験は、経営にも役立っていますか。

アメリー: はい。サン=ジェルマン=アン=レーのお店には販売担当が3名います。小さなチームですが、私は販売だけでなく製造やスケジュール作りなど、あらゆることに関わってきました。短期だけでなく中長期のヴィジョンも考えることもそうですが、それらは引き続き、私の仕事です。

市川 いまは、日々どんなお仕事を?

アメリー: とても忙しいですよ!ショコラトリー、パティスリー、製造のプランニングなども行っています。もちろんお店にも立ちます。常連のお客様がたくさんいて、その中には、私に接客してほしいと言ってくださる方もいますから。それはうれしく幸せなことです。

父から見た娘・アメリーさん

サン=ジェルマン=アン=レーのパスカル・ル・ガックでお仕事をしていたアメリーさん(市川歩美撮影)

市川 パスカルさん、娘さんにはどんな才能を感じていますか。

パスカル: アメリーとは開店当初から一緒に働いてきましたが、なんというか、私たちは馬が合うんです。父親として、彼女の仕事ぶりを高く評価しています。突然すべてを引き継ぐのではなく、少しずつアメリーに経営を任せていく。その過程で、ブランドもアメリー自身もともに成長していく。それがいちばんよい形だと考えていました。

市川 これからどんなお店にしていきたいですか。

アメリー: お店を大きく広げるつもりはありません。たとえば10店舗に増やす、といった構想はないのです。いまあるサン=ジェルマン=アン=レーと日本のお店を、ていねいに、大切に育てたいということ。おいしくて美しいものをお届けし、みなさんにまた戻ってきていただける店でありたいです。

パスカル・ル・ガックさんは一番かっこいいパパ

市川 お父様はどんな方ですか。

アメリー: 私にとって一番かっこいいパパで、一番強いパパ。そばにいてくれてとても幸運です。仕事では上品で、仕事やお客様、人に対して常にリスペクトがある人です。

市川 お父様のショコラはどんなショコラですか?

アメリー: 私は父のショコラを、世界で一番よく知っている人だと思います。そして一番おいしいことも知っています。私自身、これまでに多くのショコラを比較してきましたが、やはりパスカル・ル・ガックのショコラは「モンショコラ(私のショコラ)」と呼びたい存在です。

市川 パスカルさん、これからもそんなショコラを作り続けてくださいね。日本のファンも待っています。

パスカル: アメリーのおかげもあって、クリエーションはこれからも私が中心となって行います。ショコラティエチームは開店当初から変わっていません。17年の経験を持つ職人たちもいます。私たちのショコラの味は変わりませんよ。

プロフェッショナルのまなざし

市川 アメリーさん。さきほどからお客様やスタッフの様子を、よく観察されていますね

アメリー: ええ(笑)、普段から店にいますから、どうしても目がいってしまいます。スタッフの動きや注意の向け方、お客さまの様子など、きちんとできているかと自然にみてしまいます。私の職業ですからね。

市川 プロフェッショナルですね。日本のお客様はフランスと違いますか。

アメリー: 違います。日本の方は時間をかけてショコラをじっくり選びます。フランスではもっとショコラを決めるのが、早いですね。

パスカル・ル・ガックさん、アメリーさんからメッセージ

市川 最後に、日本のファンへメッセージをお願いします。

パスカル: 今年も来日できたことを、うれしく思います。日本の長年のお客さまと一年に一度再会できるのは、私の大きな喜びです。日本は私たちにとってとても大切な国です。これからもパスカル・ル・ガックのショコラを好きでいてください。

アメリー: 初めての日本で、みなさんからあたたかいおもてなしを受け、本当にうれしかったです。みなさん、フランスにいらしたら、ぜひサン=ジェルマン=アン=レーへお越しください。私たちも同じように歓迎します。父と一緒に、ショコラを通して、情熱や愛情を届け続けます。

左から、パスカル・ル・ガックさん、市川歩美、アメリーさん(パスカル・ル・ガック東京にて)

(終わりに)
お話をしていて、終始、お互いを信頼し、大切に思い合うお二人であることが伝わってきました。パスカル・ル・ガックさんとアメリーさん。ご一緒した時間は心地よいものでした。

パスカル・ル・ガックは現在、フランス・サン=ジェルマン=アン=レーの本店、そして海外で唯一の店舗である「パスカル・ル・ガック東京」の2店舗を展開しています。規模を追うのではなく、ショコラの味やお客さまとの関係を大切に育んでいく。その姿勢は、親子のあいだで確かに受け継がれていました。

長年のファンとして、これからの展開を楽しみに見守りたいと思います。

パスカル・ル・ガック 東京

text ジャーナリスト/チョコレートジャーナリスト 市川歩美

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